6日目(1月1日)6時30分クライミング開始
ネリオン峰南東壁ノーマルルート。やさしい岩登りから始まった。
別パーティ2組と交差するように登っていく。
慌てると、物理的に不可能な要求を真面目にしてくる相方。
いつもの様子。ケニア出発直前はドタバタで心配したけど本番に強い。
土壇場でヘロヘロな私は見習おう。どうやってかは知らんけど。
別のパーティが取りついている。クライミングシューズなら余裕あると思われるが、不慣れな登山靴では心細いパートだった。相方渾身のリード。
何か所か時間を要する、おっと思うピッチがあった。(実際1か所ロープにテンションかけた)
お互い様だけど、リードが苦労してもフォローは余裕あるケースが多い。
フリーならどれどれ自分もと思うけど、こういうクライミングだと時間との闘いで、そんな余裕はない。交互に登り続けた。
岩はフリクション良く、プロテクションも取りやすい。若干悪いところはピンポイントでハーケン等ある。(あくまで最小限で、日本の人気ルートのような感じではない)
若干左右に振られるのと、トポと実際に現地の人らが使っているルートは違う箇所が何か所かあった。
ネリオン峰(5189m)着。
もうすぐ17時。と思っていた…。
今回、私は時計を忘れて、代わりに持ってきた携帯電話を見て発覚、もうすぐ15時だった。中盤からずっと相方の時計は高性能過ぎて2時間早かった。
中間部地点で12時と聞いて、時間がかかり過ぎていると、先を焦ったため、以降、ネリオンまで自分では時間を確認していなかった。(ということは10時だった)
ガイドと定時無線連絡取れぬわけであった。他人の時計は信じられないので、忘れず持ちましょう。
そんなこんなに始まり、混迷を極めた。
①ネリオンを最終地点として、このまま下山。
②バティアン往復してビバーク
③ビバークして翌日バティアン
こないだ救急救命講習で「まず決める」と習ったはずが、決断するのに1時間以上かかった。宿泊装備がない。小屋で待っているガイドと連絡を取れない。(予定では明日下山の7日間の契約)そもそも下山の懸垂に実際どの位時間がかかるかわからない。プラス、相方は自分の体調も心配したことでしょう。
結果、③案としたわけです。後に本当の定時でガイドとも連絡ついた。
(当初自分は①②案、相方①③案だった。結果的に3時間でバティアン往復は不可能で③は正解だった。)
人生初の5000mオーバーでの泊は、寝袋なしの緊急ツェルター箱泊。笑
シュラフカバー等、あるもの全部使った。
下には小屋が見える。
ガイド・アレックスもいるはず。
夜、再び過呼吸症状で、最後の薬を飲む。
7日目(1月2日)
ちゃんと生きている。6時前発。6時半には日の出を迎えるはず。
暗闇の中、ヘッドライトでリッジ上を行く1ピッチ目はなかなか独特な感覚だった。
明るくなれば通常モード。
Gate of Mist と呼ばれるコルへ降りる。
事前情報で歩けるはずだったこのパート。
雪と氷が張り付き、氷にジャム、氷にアンダーといったよくわからない種目と化したけど、しっかり時間をかけて抜けられた。
クランポンはAustrian Hutに置いてきた。結果的に問題なかったけど、Gate of Mistの登り返しを考えても、やはり1セットでもあると心強いのかもしれない。
残り2ピッチ。
そして最後かもしれないピッチが回ってきた。
ものすごく感傷に浸るビレイの時間であった。何年も夢に見た山頂がそこにある。
1月2日9時40分。バティアン峰(5199m)登頂。
下降。
下降時には、少し雪が緩み、やさしい感じになった。
コルへ降りた際、トップロープ状態にしていたGate of Mistの入口登り返し。
ごぼうなのに2度フォールする自分に見かねて相方出陣。いつか見せてくれる予定だったユマーリングを、番を期して!
のはずが、うまくいかずごぼう。
改めて、フォローとなった自分のごぼうも体重差もあり、簡単には上がれず。
(5.8とか5.9とかあるのでは。出だしの見た目よりプロテクションは取れるし、登ることも可能)
あーだこーだ試行錯誤してしまい、「あーやっぱりテンション!」
慌てて言い間違ったら運の尽き。
「テンション?!テンションてどっち?!テンションてどっち!?」
「テンションはテンション…」
日常な珍道中を5000mで。
この日ネリオンより先の、バティアンのエリアには私達しかいなかった。なおさら楽しい。
下は雨の降る悪天だったようで、着地までこの日はまったく別パーティに遭わなかった。
慌てさせたのを反省し、次のピッチはすぐ出てネリオン山頂へ戻る。
14時前ネリオン下降開始。
ネリオン以降は平衡感覚がおかしい。買って出た相方オールリード懸垂。楽しそう。
60mロープやツェルターに残置していたもろもろを背負っていたにしても、身体が重かった。前々日からあまり食べれてないのもあったかもしれない。
懸垂用アンカーの発見が難しいと聞いていたが、マーキングなどもあり、3時間と少しで地面着陸。
60mロープ1本で下れるような設定となっている。(実際、現地ガイド勢も60mを使っているとのこと)
自分がリードだと、疲れていたので何回か間違えて時間がかかったに違いない。
着陸後、濃霧で多少道を間違えるが、明るくなった際に道を見つけることができ、探しに来てくれたガイド・アレックスに合流。(18時)
Austrian Hutではバティアン登頂ということで、暖かく歓迎を受け、コックポーターらと合流。食事を取ったあと、夜行でTeleki Lodge(4300m)まで下山した。
長い2日間だった。
7日間の予定なのに、8日目が確定する。笑